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臓器ファームは、肝臓、腎臓、眼球、血管、筋肉などの移植用臓器ごとに区分けされ、それぞれがその臓器に最も適した環境で大切に育てられる。定期的な検診により、その臓器がどの程度優秀かを評価され、最高ランクはSランクとされて、驚くほど高い保険料金を払っている一握りの富裕層たちの身体に移植されていく。移植に伴い、不必要な他の臓器を低いランクの保険加入者に臓器移植していく。
富裕層の人間たちは、今や病気を治療するよりも、少しでも病んだ臓器を移植によって健康になる方法を選んだ。自ら、健康になるための努力を放棄して、健康を金で買うようになっていった。
臓器ファームの子どもたちは、ノンストレスですくすくと健やかに成長していく。いつかくる自分の臓器を提供するその日まで、その笑顔は輝いて、瞳は澄んでいることだろう。
僕は臓器ファームの施設を外から眺めながら思った。ここにいるのは、部品だ。だから、この施設で暮らす子どもたちには、管理番号はつけられているが、名前はない。ここで暮らす子どもたちは人間ではないのだ。
僕のすぐ横を、眠らされてストレッチャーに横たわる女の子が運ばれていく。ふと顔を見ると、まさにこの前、鬼ごっこは負けないと言ってきたあの女の子だった。これから、両肺と膵臓を抜き取られる。
僕は苦しんでいる人間を救いたい。その願いが叶う環境が整っている今、僕はとても満足している。
了
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