双子の姉

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私の名前は『流川 凛音(るかわ りおん)』、静岡県富士宮市内の県立高校に通う3年生の女子だ。 私が生まれた時は『詩音(しおん)』という双子の姉がいたようだけれど、産まれて3ヶ月後に乳幼児突然死症候群(SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)という病気で亡くなったということを両親から聞いている。 この病気は何の予兆や既往歴もない赤ちゃんが睡眠中に突然死に至る原因の分からない病気で、12月以降の冬期に発症する傾向が高いということがわかっている。 詩音と私が産まれたのは11月5日で、詩音が亡くなったのは2月9日という話を聞いている。 また詩音のお墓は富士宮市内の私の自宅から自転車で15分ほどの朝霧高原の富士山がとてもきれいに見えて見晴らしの良い墓地にある。 私は幼い頃から人見知りをする女の子で、なかなか友達ができず、いつも1人で遊ぶことが多かった。 高校に入学しても友達と呼べる相手もいなくて、こんな自分に少し嫌気がさしていた。 私は5月に入ったゴールデンウィークの高校が休みのある日、特に理由もなく詩音のお墓に行ってみたいという衝動に駆られて、この日は快晴ということもあってお昼を済ませてから自転車で詩音が眠るお墓のある墓地に向かった。 以前この墓地には両親に車で連れて来てもらったことがあるため、墓地に着いてから詩音のお墓はすぐに見つけ出すことができた。 私は詩音のお墓の前で手を合わせてお祈りをしてから、自転車でふらりと山梨方面に向かって走り出した。 右手にあるきれいな富士山を見ながら自転車で走っていると青木ヶ原の樹海入口という看板が見えてきたので、私は興味があって少し立ち寄ってみることにした。 自転車を駐輪場に置いて林の中の小道を歩いて行くと、人が通れるほどの小さなトンネルが見えてきた。 中はオレンジ色の照明で照らされていたけれど薄暗くて古びた感じで、思い切って中に入ってみると少しひんやりとした空気で怖いような感じもした。 そのまま歩くとすぐに出口があり、トンネルを出るとブランコ、滑り台、砂場、鉄棒などの小さな子供が遊ぶ遊具がある小さな公園があった。 またそこは小高い場所にあるようで富士宮市街が一望できる、とても見晴らしの良い場所だった。 公園の中に入っていくと木製の長椅子があって、そこに座っている後姿の1人の女の子を見つけた。 私は少し離れた場所にある別の長椅子に、女の子に背を向けて腰かけて富士宮市街の景色を眺めていると、 「こんにちは」 と声をかけられた。 私があわてて立ち上がって振り向くと、そこには私の顔や背格好がそっくりな女の子が立っていた。 「こんにちは」 私もあわてて少し緊張しながら挨拶するとその女の子はにこにことした優しそうな笑顔で、私は何故かほっとして笑顔になっていたと思う。
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