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カオリさんを載せ、行きつけのスーパーマーケットと薬局を回ったあと、休憩がてらテナントモールの喫茶コーナーへ向かった。
駐車場に進入し、出入り口に程近い場所に身を寄せる。
停止すると同時に「ふぅ……」といつもより大きく息を吐いた僕の声を、カオリさんは耳聡く聞きつけた。
「どうしたの? もしかしてどこか不調なのかしら?」
「あぁ、いえ大丈夫です。ちょっと最近心臓のあたりの調子が悪くて」
「それはいけないわ。すぐに専門の方に見てもらいましょう」
親身になって気遣ってくれるカオリさんを「心配には及びませんから」と押し切り、喫茶コーナーへ行くよう促す。
カオリさんは「ちょっと待ってて」と言い残すと、入り口近くの喫茶コーナーを通り過ぎ、テナントモールの奥へ消えた。
カオリさんの方こそ久しぶりの外出で疲れていて休憩したいだろうに、格好悪いところを見せちゃったな――。
程なくして出てきたカオリさんの手には、ライトイエローの液体が詰まった褐色の遮光瓶が握られていた。
僕が好む飲料だ。これを体に入れると気合が湧いてくる。
「これで少しでも元気が出ればいいのだけど」
カオリさんが栓を開けてくれた飲料を有難くいただいてから、普段通りの道筋を心持ちゆっくりと帰路についた。
カオリさんは僕の上で微睡んでいて、その重みがいつもより深く僕の体にもたれかかった。
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