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今日も学校に行ってきて、家に帰る。なんて事ないいつもと同じ変わり映えしない風景。
自分の家は12階のマンションの3階にある。周りにも同じようなマンションが建っていて、自分が住んでるのは3つ並んでる真ん中のマンションだ。道路は同じく帰宅する学生やスーパーに買い物に行く子連れの夫婦がいたりと、いつもと変わらない。
いつもと同じ様にエレベーター前に立って、今何階で止まっているのかを上のモニターで確認する。今はどうやら7階で止まっているようだ。▲ボタンを押して下に降りてくるのを待つ。この間に子連れのお母様と、スーツを着た男性、男子小学生、オシャレな服を着た女性が同じく乗るためにエレベーター前に集まってきた。うん、今日はこの人達か。別に知ってる人では無いけど、こういうのってちょっと気になるよね。
エレベーターが降りてきた。ドアが開いて乗り込む。自分は3階で降りるから3のボタンを押す。他に一緒に乗り合わせた人達にも何階で降りるのかを聞いて、他の人達の分のボタンも押す。見慣れたいつもの風景だから流れるように押して、3階に上がるのを待つ。
エレベーター内部にあるモニターを見て、3階になるのを眺めていた。でも、3階の表示になっても止まらないでそのまま上に向かって上がっていく。自分は、あっ…て思うと不安が込み上がってきた。
エレベーターの仕様上、内部に乗ってボタンを押しても、先に別の階の住人がボタンを押してしまうとそちらが優先されてしまい、止まれないまま別の階に行ってしまうというやつ。多分、エレベーターあるあるだと思う。地味にびっくりするやつだ。
今日はって思った事といつもと同じ風景で見たことがあるってデジャブを感じた事。部屋に帰ろうとすれば何時も見る風景だけど、なんとなく違和感を感じるような…?
まぁ他の人の階で止まるだろうと諦めてモニターを眺める。ぐんぐん階が上がっていく、他の乗り合わせた人の階にも止まらずに。でも、あるあるがあるから他の人もそこまで気に留めてないようだった。
9、10、11、12……
遂には12階まで来てしまった。でも、止まらずに内部のモニターは12以降の数字を刻んでいく。13、14、15、16……。全く止まる気配がない。心なしかエレベーターの揺れが酷くなった気がする。乗り合わせた人達もえ?っと動揺し始めた。どうなっているの??と。
窓の外から見える風景はマンションの内部では無くなってしまっている。本来の12階では無くなってしまったから当然といえばそうだけれど、だからといってそれ以降がずっと空を昇る様な風景なのはおかしいだろう。
モニターは今35階付近を指している。
私は本来ならあり得ない数字に焦って、下に降りるように1階のボタンを押した。だって、そうすれば何とかなると思って。
押した瞬間、ピタリと止まった。
普通に指定した階に止まる様に。
だから、ちょっと安心して油断してしまった。
エレベーターの箱は、唐突に急降下し始めた。
さながら、アトラクションのジェットコースターの様に落ちた。心臓がフワッとする感覚になる。ガタガタと大きく揺れる箱と閉鎖状態の急落下、もうそれだけでパニック状態に陥る。
どうすればいいかなんて分からないから、乗り合わせた人達も悲鳴をあげながらしゃがみ込む事しか出来ない。私もしゃがんで悲鳴をあげながら、恐怖に怯えて立ち上がる事もままならないし、もうモニターの数字を見守ることしか出来なかった。
35階とかいう高層ビル並みの高さから急落下なんてしたら落下中のダメージもあるが、1番は物凄いスピードで地面に叩きつけられるのが怖いと脳内の直感が警鐘を鳴らす。
モニターの数字もぐんぐんと小さくなっていく。アトラクションと違って安全装置なんて無い。だから、地面に叩きつけられ死が訪れる、なんて現実が近づいてくるのが目に見えて、お願いだから止まって!!なんて悲鳴と絶叫が出てくる。
5、4、3、2……
死へのカウトダウンが迫ってきた。どれだけ嫌だと叫んでも、もう死んでしまう絶望。もう、この後にくるであろう衝撃を待つしかなかった。
1
あれ……??
い、生きて、る……??
叩きつけられる衝撃は訪れなかった。
でも、まだ降下している。
2、3、4、5……
逆に地下へのカウントが始まった。
上っていた時同様、住んでいたマンションではあり得ない数字がモニターに表示される。
乗り合わせた人達も死を覚悟していたのに衝撃すら来ず、更には下がり続ける現象に困惑するしかなかった。
窓の外は、暗闇があるのみ。先は見えず光も無い。ただ、エレベーター内部の光があるだけ。
止まる様子も無く、ただずっと下がり続ける。
だとすれば、もう一度上の階のボタンを押せば上に戻れると思うだろう。少しでも早くこのエレベーターから出たいのだから。乗り合わせた男性が咄嗟にボタンを押した。
そしてまた、ピタリと止まった。
普通に止まる様に。
そしてまた、急に上昇し始めた。
ガタガタと大きく揺れながら。
モニターの数字は減っていって、また1階に戻ってはきた。でも、ボタンを押した階には止まらない。先の光景が繰り返されただけ。
『永遠にループし続ける』
そんな恐怖が絶望が、助かる手段を考える思考力を奪い、何も考えられない混乱へと落としていく。
そこからは、とにかくボタンを押しまくった。上に行けば下を。下に行けば上を。パニックで何も考えられないから、とにかくボタンを押せば何とかなる筈だ!の単純な作業しか出来なかった。
幾度昇り降りを繰り返しただろうか。
もう出られないのではと思いながらも、どうにか助かりたい気持ちだけで必死にボタンを押した。
繰り返したのち、何故か4階と5階の境で止まった。
理由なんて全く分からない。でも、今までとはあからさまに違う現象だった。
窓の外はいつものマンションの光景。階層の途中ではあるけど、上を見上げれば人1人分の隙間があり、そこから外の暖かい日の光が差し込んでくる。
恐る恐るではあったけどすぐさま開くボタンを押せば、中途半端な状態ではあったが扉が開いた。
力ずくで開ければ何とかなりそうだと乗り合わせた人達で喜び合った。
さぁ、こじ開けてこのエレベーターから抜け出そう
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