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Prologue
「……双子だと? どういうことだ、こんなことは今まで一度だって起こったことは無かったのに」
それは、平和の象徴とも言われる大国ゼーフェリングに今までに無いほどの大雪が降った夜のことだった。
おぎゃあ、おぎゃあと赤ん坊の泣き声が部屋に響いている。普通ならすぐに誰かが抱き上げるはずなのに、その場にいる全員がただその赤子たちを見つめているだけだった。
赤ん坊の母親は難産に耐えきれなかったのか、その子達を産み落とすと同時に息を引き取ってしまった。
母を亡くした子供達の悲しそうな泣き声を聞きながら、大人たちはそれどころではないと言うようにヒソヒソと話をしていた。
「一人しか産まれるはずのない聖女が双子など、なんと不吉な……」
この国の王族に古くから仕えていた占い師の老婆はガタガタと震え、ショックも隠せないような表情のままそう言い放った。その言葉にこの部屋にいた全ての人間が息を潜め、顔を見合わせている。
大きな声で力強く泣き声をあげる金色の産毛の赤子、だがもう一方で泣くこともせずほとんど動かないままの白い肌の赤子。まるで対称的なその双子の様子に占い師はこう告げた。
「一人は聖女、そしてもう一人は悪魔の子に違いありません。いつかはこの国の厄災になりまする、産まれたのは一人だけにした方がいい。ファーレンハルト侯爵様、どうかご決断を!」
老婆はそういうが、彼にとってこの二人の赤子は最愛の妻の忘れ形見となった。簡単に一人だけ選べと言われて「はい、そうですか」と答えられるわけがない、残された方がどうなるのかなんて聞かなくても分かるのに。
「侯爵様、早く……」
間もなく産まれたばかりの聖女を確認にこの国の王がやって来る。妻を亡くしたばかりだと言うのに、二人の父親である彼はその厳しい選択を迫られていた。
「私は……」
そしてその時の選択が、彼と二人の娘達の運命を大きく変えていくことになる。
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