強引な明るさで前進を

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「濃い霧が出てきたな、嫌な予感がする……」  最後の山を下り終えれば王都に近い細道に出る。レーヴェはそう思っていたのに、あと少しの所で異様な霧が辺り一面を覆っていく。  今の気候的にもこんな霧が出るのはおかしい、そう感じたのはアゼルも同じようで。二人はロッテを囲むようにして、各々の武器を構えた。 「俺たちが離れたら、すぐに安全なところに隠れてくれ」 「分かったわ」  ロッテが一緒に戦うと言っても、彼らの足手纏いにしかならないだろう。何も出来ない事をもどかしく思いながらも、彼女はせめてお荷物にならないようにと必死だった。 『ああ、もうこんな近くまで……もっと早く始末出来ていれば……』  どこからともなく聞こえてくる美しい女性の声。それは歌うように、心を惑わせるような甘い香りと共に確実に三人へと近付いてくる。  姿は濃い霧に隠されてるのか見えないが、その声音にロッテは聞き覚えがあった。 「アンネ、マリー……?」  声の主はロッテの問いかけに返事をせず、クスクスと楽しそうに笑っている。随分と余裕があるのだろうか、そんな見えない敵を相手にレーヴェとアゼルは神経を尖らせた。  目的は間違いなく本物の聖女であるロッテ、彼女の命だ。この国だけでなく、自分たちにとってもロッテはかけがえない女性。彼女だけは必ず守らなければならないと、二人は手にしている武器を強く握りしめた。
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