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「どこにいる、姿を現わせ! ロッテに手を出そうとするなら、俺が相手になってやるぜ?」
挑発的なセリフを吐くアゼルとは対称的に、レーヴェは相手の僅かな気配を探ろうとする。
そんな中でロッテはこの状況で守られるだけの存在になりたくない、と自分を奮い立たせ濃い霧に向かって話しかけた。
もし濃霧の向こうにいるのが妹のアンネマリーならば、姉である自分が一番に向き合うべきだと。
「貴女、アンネマリーでしょう!? ねえ、教えて欲しいの。今の貴女が何を考えてるか、どうしてこんな事をしてるのかを。マリーの口から、ちゃんと聞きたいの」
「おい、ロッテ? いまさら何を……」
レーヴェやアゼルがギョッとするが、ロッテは構わず言葉を続ける。もしアンネマリーの狙いが自分ならば、声をかけ続ければ姿を現してくれるかもしれないと。
そこには淡い期待もあった、妹には何か事情があってこんな状況は本当は望んでない可能性だってある。それならば戦わず説得できるかもしれないから――
しかし、そんな希望はすぐに砕かれる。可愛かったはずの妹の一言で。
『虫唾が走るわね、貴女のそういうところ。優しくてお人好しでみんなに好かれる侯爵令嬢、ずっとずーっと目障りだったの』
「アンネマリー……」
『カールを奪って、辺境地にまで追いやってやったのに。どうして……? どうしてまだ私の邪魔をしようとするのよ!』
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