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邪魔、という言葉がロッテの胸に刺さる。聖女の力を顕現して以来、家族に周りの人々に……そしてカールハインツにも愛されている筈のアンネマリーにそう思われていた。
同じ日に生まれ、母がいない事でロッテなりに妹を可愛がってきたつもりだった。もちろん時に叱咤することもあったが、それでもこれほどまでに憎まれているなんて。
――いや、本当は考えなかったわけじゃない。そう思いかけて、何度も頭の中で打ち消してきただけ。何度もアンネマリーは大切な家族だと、自分に言い聞かせて。
けれど現実はそうではなかった。アンネマリーはロッテを疎ましく思い、婚約者を奪って辺境地に旅立たせても気が済まなかったというのだから。
「邪魔、とはどういう意味? 貴女は『聖女』で国を救わなきゃいけない存在でしょう、どうして神殿に向かおうともしないの?」
聖女が神殿で祈りを捧げること、それがこの国を救う大切な儀式だと言われている。ロッテが持つ治癒の力、そういった聖なるパワーを神殿で増幅させて国の隅々まで行き渡らせるのだ。
本来ならばそれが、聖女となったアンネマリーの役目のはず。しかし彼女は一向に王都から離れようともせず、華やかな毎日を送っているという。
『別に国や民を救いたくて聖女になったわけじゃないもの、面倒な事はお断りだわ。どうしても国を救いたいのならロッテ、貴女がやればいいじゃない』
「何を言ってるの⁉ そんなこと出来るわけが……!」
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