予想しなかった出会い

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「……どういうことか、詳しく聞かせてもらってもいいか?」  それは思ってもいないほど優しい問いかけだった、さっきまでの強い口調が嘘のように穏やかに話しかけられて思わず顔を上げる。  目の前にいた男性は心配そうにシャルロッテの顔を覗きこんでいるが、そこに彼女を馬鹿にする様子は見えない。真剣にその話を聞きたい、そう彼の表情がロッテに伝えてくるようで。 「ファーレンハルトの聖女、それが妹のアンネマリ―なんです。聖女の力を顕現させられなかった私には、もうカールハインツの婚約者である資格がなくて。聖女を傷付けた罪でこの辺境地へ療養という形で追放されたに過ぎないのです」  まさか初めて会った人、それもどこの誰かも分からない男性にこんな身の上話をすることになるとはロッテも思ってもみなかった。それでも話しても構わないと彼女が思ったのは、この男性の瞳がとても真っ直ぐだったからかもしれない。 「カールハインツ騎士団長はそんな手を使って貴女との婚約を破棄し、聖女である妹君を選んだと?」 「仕方ないんです、彼は生まれた時から()()との結婚を決められた人なんです」  もしシャルロッテが聖女の力を顕現させていたとしたら、カールハインツはアンネマリーへと心変わりをしなかっただろうか? 今さら言っても仕方の無い事だが、それでも自分がそれだけの理由で棄てられたのだとロッテは思いたくなかった。
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