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予想していた婚約破棄
「シャルロッテ・ファーレンハルト! 今日を持って貴女との婚約を破棄させてもらう、理由は言わなくても分かるよな?」
それはシャルロッテが十八歳を迎えた祝いの夜会での出来事だった。いつも優しく彼女を見つめていたはずのカールハインツの瞳は氷のように冷たく、まるで別人のように感じた。シャルロッテとカールハインツは数年前に婚約が決まり、あと少しで一緒に暮らすはずだったのに……
いつもシャルロッテがいたはずの彼の隣には、妹のアンネマリーが当然のように寄り添っている。まるで悪夢を見ているようだった、信じていた二人の裏切りにロッテは声も出せなくて。
いつかこういう日が来るかもしれない、それはあの日から覚悟していたはずなのに。実際に現実になるとあまりにショックで、彼女はそれをなかなか受け入れられずにいるようだった。
「ごめんなさい、シャルロッテお姉様。でも、私が本物の聖女なんだから仕方ないわよね?」
申し訳なさそうにアンネマリーはそう言うが、その言葉に心はこもっていない。彼女には最初からこうなることが分かっていたのだろうから。
数か月前、妹のアンネマリーは聖女としての力を顕現させた。しかしシャルロッテには何も起こらないままこうして十八の誕生日を迎えてしまった。
「我がベッカー家では聖女である女性との結婚が決められている。シャルロッテ、君は聖女ではない。この結婚は無効にさせて頂こう」
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