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見ない振りした裏切り
ガタガタと揺れる馬車の中、シャルロッテの視線はぼんやりと宙を彷徨っていた。侯爵家が用意したとは思えないボロボロの馬車は今の彼女にお似合いなのかもしれない。
雨が降れば雨漏りしそうな天井に破けかけの椅子、カーテンまで薄汚れていて思わず笑いが込み上げてきそうになる。
シャルロッテとアンネマリーは双子としてあの家に生まれ、何不自由なく育てられた。昔はアンネマリーも彼女と仲良く遊んでは疲れて一緒のベッドで眠っていたりもしていた。
初恋の人も同じで、二人で話しかけられるたびにきゃあきゃあと騒いだりもして。
そんなロッテとアンネマリーの関係が変わったのは、カールハインツとの婚約がきっかけだったのではないだろうか? 二人の初恋の相手でもあるカールは姉のシャルロッテとの縁談を受けたのだ。
聖女が産まれるとされるファーレンハルトの家では、昔からこの国で一番力を持った貴族との婚姻が決められていた。
その時シャルロッテとアンネマリーは共に十六歳だったが、どちらも聖女としても力は顕現させてはいなくて。そんな中決められたカールと彼女の婚約で、アンネマリーは数日塞ぎこんでしまうほどだった。
カールはロッテを大事にしていたし、彼女も彼を純粋に慕っていた。このままいけば二人は良い夫婦になれる、そう信じて疑いもしなかったのだ。
――アンネマリーが突然、聖女の力を顕現させた半年前までは。
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