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それは本当に突然だった。シャルロッテとカールハインツの結婚が近づくにつれ部屋に篭りがちになっていたアンネマリーが、不思議なオーラを纏うようにして急に現れ美しく微笑んで見せたのだ。
昔から聖女は不思議な力を持ち、その国を正しく導き栄えさせる存在だと言われている。そんなアンネマリーの能力はすぐに広まり、聖女の誕生だと大騒ぎになった。
力を顕現させたアンネマリーと何も出来ないシャルロッテでは、段々と周りの見る目が変わっていくのが嫌でも分かった。彼女たちの父も祖父母も妹だけに過保護になり、どこにでも連れて行くようになる。
そうすれば聖女であるアンネマリーの加護を受けるため人が集まって、彼女の存在を讃えるのだから。その内に力のないロッテは居てはいけない存在のように扱われるようになり、ひっそり屋敷の中で隠されるように暮らすようになった。
誰もかれもがアンネマリーの味方で、いつの間にかシャルロッテの周りには誰もいなくなって……
「でも、それも聖女の力なのよね」
彼女が力を使う時は決まって甘い匂いがする。そうすると数分もしないうちにアンネマリーがふわりと現れ、その聖女の力を使ってみせるのだ。
暖かな春の日の中で癒されるような、それでいて満たされる感覚。あれが昔から伝わる癒しの力というものなのかもしれない。
ロッテが自分の手をじっと見つめても、何も起こらない。アンネマリーは力が溢れてくると言っていたがそれがどういうものかも分からない。
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