婚約破棄され辺境地へと追放された私ですが、ワケあり第二王子と共にこの国を救ってみせます！

見ない振りした裏切り

　婚約者のカールハインツの態度の変化に気付いたのもアンネマリーが聖女の力を顕現させてからの事だった。シャルロッテの部屋に通う回数が減り、いつの間にか手紙もろくに来なくなった。
　それでも彼女は騎士団長という任務に就いている彼に我儘を言うことは出来ず、黙ってカールに会える日だけを待っているだけで。
　そんなシャルロッテの控えめな性格も良くなかったのかもしれない。

「必ず結婚相手を君に変えてみせるよ、もう少しだけ待っていて欲しい」

　運悪く聞こえてきた話声、その声の主がカールであることはロッテにもすぐに分かった。そして「嬉しい」と答えたのが妹のアンネマリーだということも。
　その後、どうやってロッテが自室に戻ったのかさえ覚えていない。ただ、本当に二人の裏切りのショックが大きすぎて。

　そして誕生日の夜会の前日、アンネマリーから薔薇園へと呼び出されたシャルロッテは彼女に突き飛ばされて冷たい池の中へと落ちた。

　――はずだったのに。

　目を覚ませば、シャルロッテは聖女であるアンネマリーに危害を加えようとした姉だと囁かれるようになっていた。突き落とされたのは彼女のはずなのに、そんなロッテの言葉を信じてくれる人など一人もいなかった。

　……そして姉妹の誕生日の夜会で、あのような婚約破棄となったのだ。きっとシャルロッテを見せモノにするためだけに、あの日を選んだのだろうと思うと悔しくてその瞳に涙が滲んでくる。
　ロッテは強く手を握る事でそれに耐え、ただ黙って辺境地に向かう馬車の中で俯いているしかなかった。