504人が本棚に入れています
本棚に追加
「いただきます」
「ロッテ、無理しなくてもいいぞ。この婆さんの作るものは食べ物とは呼べないレベルのものばかりだから」
レーヴェはロッテを心配してそう言ってくれたが、彼女は出されたものを食べないなんて考えない。これは老婆にしてみればロッテやレーヴェのことを思っての行動だと分かっているから。
これから先は過酷な旅になる、そんな二人の為に彼女は栄養価が高く身体の為になるものを出してくれたのだ。思いやりのあるロッテがその好意を無下になど出来るわけがない。
「いいえ、私は喜んで頂くわ。こうして食べられることが有難いし、何よりお婆さんの気持ちが嬉しいの」
「……ならいいんだが」
ロッテの言葉を聞いて、レーヴェはあらためて思い知らされる。彼女が聖女でないはずはない、と。こんなにも心が綺麗で純粋なロッテを、なぜファーレンハイト侯爵は平気で屋敷から追い出すことが出来たのか不思議でたまらなかった。
「おやまあ。アンタには勿体ない程、このお嬢さんは素直な良い娘だねえ……」
「……ぐ、ごふっ!!」
老婆の言葉で、スープに口をつけていたレーヴェが急に噎せて激しく咳き込む。その様子に驚いてロッテは慌てて彼の背中を撫でさすった。
普段落ち着いているレーヴェらしくない、先ほどの老婆の言葉のどこにそんなに驚いたのだろうか?
最初のコメントを投稿しよう!