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「それは俺がガキの頃の話だろう? ロッテ、この婆さんの話はもう以上聞かなくていいから!」
「おやおや、昔の話をされると都合が悪いようだねえ。このお嬢さんの前では随分と格好つけているようじゃな、ヒヒッ」
レーヴェを揶揄うのがよほど楽しいのか、老婆はなおも彼を煽ってくる。幼い頃の話は誰しも恥ずかしい事がたくさんあるので、少しレーヴェが可哀想な気もしたが。
彼の意外な一面を知れるのはけっこう嬉しくて、ロッテはそんな二人の会話を聞きながらニコニコと笑っていた。
「それでじゃな、アタシに説教されて不貞腐れた小僧がとった行動が何と……」
「あー、もう! その話は誰にもしないって約束しただろう、そうやって婆さんは!」
何度も繰り返されるるやり取りが楽しくて、食事を終えるまで小屋の中はとても騒がしかった。それでもずっとそうしている訳にはいかない、早く行動しなければなおも動ける範囲を狭められてしまう可能性がある。
ロッテとレーヴェはヤックルを頼んだあと老婆にお礼を言って、今度は徒歩での移動を始める。
「大丈夫か、ロッテ? この先は余計に上り坂が急になる、疲れたら早めに言ってくれ」
「ええ、分かったわ。でも大丈夫、これでも体力には自信があるの」
山を越えなければならない事は最初から分かっていたし、覚悟も決めてしっかり準備もしてきた。それでも普段は人が登らないような場所なので、楽に進める訳もなく。
まだ半分も登りきらないうちに、ロッテの体力は限界を迎えてしまった。
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