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御者に渡された鍵でドアを開ければ、埃と黴臭さが鼻を突いた。埃の積もった廊下を靴を履いたままゆっくりと歩き、一つずつ部屋の中を確認していく。
屋根の壊れたいくつかの部屋は雨漏りのためか黴が生えとても使えそうにない。運が良い事に厨房は割と綺麗な状態のままで、掃除をすれば何とか使用することが出来るかもしれない。
一階の奥に日当たりのいい部屋を見つけ、シャルロッテはホッとしてそこを自室にすることに決めた。寝具などの予備も見つけ、洗えばなんとかなりそうで今夜はキチンと眠ることが出来そうだと胸をなでおろす。
「……それにしても、何かが変よね?」
綺麗だったのは厨房と浴室、そしてこの部屋だけ。後は完全に手入れをされている気配はなかった。特に気になったのは浴室で、まるで誰かが使った後のような気配さえ感じられた。
使用人がいるとしても、掃除をするのならこんな部分的はしないはずだ。いくら誰も来ないような屋敷とはいえ、お金をもらって働くのならここまでいい加減には出来ないはず。
……それに、すべての部屋を見て回ったけれどやはり誰もいる気配はないようだ。
「これ以上考えても仕方ないわ、まずはしっかり眠れる環境を作らなきゃ」
シャルロッテは荷物の中から動きやすい服に着替えると、クローゼットに積み重ねられていたシーツを取り出してそのまま外に出る。まだ日も明るいしこの天候なら洗って乾かせるだろうと。
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