強引な明るさで前進を

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「起きろ、アゼル。そろそろ朝日が昇る、今日中に山を越えてしまわないと」 「ああ、もうそんな時間か。しかし誰かと野宿するのなんて初めてなんだが、意外と悪くないな」  この性格で今まで一人で暗殺者をやっていた方がずっと不思議だと思うんだが、レーヴェもさすがにそこまでは言えない。そういった職業を選ぶということは、何か深い理由があってもおかしくないからだ。  明るいキャラだからこそ、そこにどんな闇があるのかなんて想像が出来ない。それを簡単に聞けるほど信頼関係を今はまだ築けていないことも分かっていたから。 「おはよう、アゼル。よく眠れた? 私は何の役にも立てなくてごめんなさい」 「いいや、ロッテには王都で大事な役目があるんだろう? それまではしっかり体力も気力も温存していてもらわなきゃだからな」  そう言って朗らかに笑うから、ロッテもつられて笑顔を見せる。レーヴェと二人きりだとどうしても気を使って頑張りすぎる彼女だったが、アゼルの気軽さが良いクッションになっているのかもしれない。  朝食はアゼルが魔女の家から持ってきたという固いパンとチーズ、そして薬草のオムレツだった。ロッテたちを追いかけてきたと言いながら、ちゃっかり魔女の家に寄って来ているのがアゼルらしいというか。レーヴェは見慣れた薬草のオムレツを目にした途端ガックリと肩を落とした。  どうしてあの婆さんは食べ物を作る際に見た目や味ではなく効能を何よりも優先するのだろうか、と。
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