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「さあて、腹も膨れたし一気に山を越えて目的地まで突っ走ろうぜ!」
朝食を済ませたアゼルが立ち上がり山の向こうを指差してそう言うが、彼らの目的地は真逆である。しかも……
「突っ走るならお前一人でよろしく。その勢いで王宮の門兵まで蹴散らしてくれれば、もの凄く有難い」
「え、俺ってばそこまで期待されてるの!?」
「……」
レーヴェのそんな言葉も、アゼルは怖ろしく前向きに受け取っていくからある意味凄すぎる。ロッテは二人のやりとりを微笑ましい顔で見ているし、何だかんだでバランスの取れた三人なのかもしれない。
レーヴェは優しいし気を使ってくれるが、ロッテが妹のアンネマリーの事を考える時間は少なくなかった。でも今はアゼルの明るさで気持ちが軽くなったのか、彼女の笑顔が増えている。
「もちろん期待してるわ、レーヴェも私も。でも、危険な事はしないでね?」
「あ、ああ。ロッテにはもう迷惑かけないようにする」
「……ロッテにだけかよ」
一度はロッテが聖女の力を使ってアゼルを救ったとはいえ、彼女の力は不安定で未知数だ。無理はさせられないとアゼルもよく分かっているようで真剣な表情だ。
ただ……隣に立っているレーヴェのツッコミは、まるっと聞こえないふりをしているのだが。
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