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ぼく
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「名前を呼びなさい」
真っ白の髭を生やし、杖をついたおじいさんがぼくに向かって言った。
周りは真っ暗なのになぜかおじいさんは光っている。
「名前を呼びなさい」
おじいさんはカツンと杖をつき、一歩ぼくに近づいた。
「·····」
本当は眩しいから目を反らしたいのにぼくは黙ったまま表情のないおじいさんの顔をただ見ていた。
「名前を呼びなさい」
おじいさんはまた一歩、ぼくに近づいた。
「·····」
おじいさん顔には迷路みたいなシワがいっぱいある。
「名前を呼びなさい」
おじいさんはまた一歩、ぼくに近づた。
「·····」
おじいさんの息は生暖かくてゴミの臭いがする。
すると、突然後ろから「ぱぱ」という声が聞こえた。
急いで後ろを振り返ると、口の部分だけくり貫かれたぼくの影がニコリと笑っていた。
______
目を開けるといつもの天井が目に入り、心臓がばくばくと音を立てている。
黒い何かがぼくの中にいて苦しい。
ぼくは掛け布団をはがすとママのいる寝室へ向かうため真っ暗で冷たい廊下を一歩一歩進み始めた。
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