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雨太郎、過去を語る
なだらかな丘を登りきったところから見渡す先に、確かに城は存在していた。
城というより、どちらかというと砦といった様相を呈していた。丘の上に構えられており、幾重にもバリケードが張り巡らされた頂上には櫓が建てられていた。ときおり強い風が吹き抜けると立てられた旗が激しくたなびき、どこか荒々しい雰囲気を見る者に与えた。
「なんで城を攻め落とさなくちゃならないの?」
三条は根本的なことを尋ねた。
「縄張りのためさ――」
城攻めを前に、雨太郎は自らの意志を確かめるかのように、はるか先の城を凝視する。
「おれたちは縄張りを奪われた。あの町内はおれたちが取り返す」
(縄張り? チョウナイ?)
話がつながらない。あの城が町内?
「あの……町内というのは……?」
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