雨太郎、過去を語る

6/7
前へ
/44ページ
次へ
「仲間たちのためになにもしなかったら、おれの存在価値はない。だから誰かのためになにかをすることで、せめて死んだやつらの供養になればと思うのさ。家を出てから何日もかけて同志を集め、戦いの準備をしてきてこの日を迎えた……」  壮絶な過去であった。三条は、飼い猫がおかれた状況の運命に、ネコ自身ではどうしようもないという理不尽さを感じた。それが保護ネコの現実(リアル)だった。  語り終えた雨太郎は丘の斜面を見下ろしている。 「お、戻ってきたようだ」  こちらに向けて猛スピードで走ってくる一匹の黒ネコがいた。丘を駆け登り、雨太郎の元へと参上する。 「ご苦労。敵の様子はどうだった?」  雨太郎が問う。  どうやら黒ネコは斥候のようである。籠城する敵情を偵察し、戻ってきたのだ。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加