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「仲間たちのためになにもしなかったら、おれの存在価値はない。だから誰かのためになにかをすることで、せめて死んだやつらの供養になればと思うのさ。家を出てから何日もかけて同志を集め、戦いの準備をしてきてこの日を迎えた……」
壮絶な過去であった。三条は、飼い猫がおかれた状況の運命に、ネコ自身ではどうしようもないという理不尽さを感じた。それが保護ネコの現実だった。
語り終えた雨太郎は丘の斜面を見下ろしている。
「お、戻ってきたようだ」
こちらに向けて猛スピードで走ってくる一匹の黒ネコがいた。丘を駆け登り、雨太郎の元へと参上する。
「ご苦労。敵の様子はどうだった?」
雨太郎が問う。
どうやら黒ネコは斥候のようである。籠城する敵情を偵察し、戻ってきたのだ。
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