春の夜はまだ寒く

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 珍しいことでもなかった。夜中にパトロールに出ている警察官に不審がられるのはよくあった。昼間でもよくあったが。 「ネコをさがしてるんですよ」  先野は正直に答える。善良な一般市民なのである。 「こんな夜中に?」 「ネコは夜中に活動するんです。――あっ、私は飼い主ではなくて、飼い主から依頼を受けて、代わりにさがしているんです」  名刺を差し出した。 「ほう……探偵さんですか……?」  先野が正体を明かしても、警察官は怪訝な表情を崩さない。探偵、という職業自体が怪しげで、本当にそうかと疑っている様子であった。名刺なんか勝手に作れる。 「探偵って、人ばかりでなく、ネコもさがすんですか?」 「はい。ペットさがしは重要な仕事で、会社としましても収益の柱と考えていまして、最近はおかげさまで引き合いも多く、こうして今日も働いておるわけですよ」
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