10人が本棚に入れています
本棚に追加
珍しいことでもなかった。夜中にパトロールに出ている警察官に不審がられるのはよくあった。昼間でもよくあったが。
「ネコをさがしてるんですよ」
先野は正直に答える。善良な一般市民なのである。
「こんな夜中に?」
「ネコは夜中に活動するんです。――あっ、私は飼い主ではなくて、飼い主から依頼を受けて、代わりにさがしているんです」
名刺を差し出した。
「ほう……探偵さんですか……?」
先野が正体を明かしても、警察官は怪訝な表情を崩さない。探偵、という職業自体が怪しげで、本当にそうかと疑っている様子であった。名刺なんか勝手に作れる。
「探偵って、人ばかりでなく、ネコもさがすんですか?」
「はい。ペットさがしは重要な仕事で、会社としましても収益の柱と考えていまして、最近はおかげさまで引き合いも多く、こうして今日も働いておるわけですよ」
最初のコメントを投稿しよう!