春の夜はまだ寒く

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「おれは事実を事実としてちゃんと認める男だぜ。つまらん差別なんかしないし、みっともない嫉妬もしない」  クールに生きるのが先野のポリシーであった。 「さ、油を売ってねぇで、さっさと仕事に戻ろうぜ。そうだ、おれのさがしているネコを見つけたら知らせてくれ」  先野は依頼者からもらった写真を原田のスマホに送る。反対に先野も、原田がさがしているネコの写真をもらった。 「じゃあな」  先野はライトを照らしながら歩きだす。ひょこひょこと歩き去っていく先野の背中を見送って、 「三条さん、ぼくたちもがんばりましょう」 「そうね……」  三条はきびすを返す。  深夜の住宅街はひっそりと眠りのなかにあった。
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