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俺は、期待されていた。
俺は母親に、勝手に、期待されていた。
「志望校を変えたいですって?塾にも通わせて家庭教師だって付けたんだから、さすがに第一志望のところじゃなきゃ許さないわ」
「…俺、普通の公立に行きたいんだけど、」
「なに馬鹿なこと言ってるの。そんなのお母さん恥ずかしくて外を歩けないじゃない」
周りの目を誰よりも気にする人だった。
そして息子の人生は自分の人生と言うように、小さな頃からすべてを決めるような人。
小学校受験、中学受験と、俺の意思などまったく関係なく育てられてきた。
サッカーがしたかった。
なにかスポーツを習いたかった。
そんなことを話すと、小馬鹿にしたように鼻で笑われるだけ。
もちろん聞き入れてもらったことは1度もない。
きっと彼女の中には理想の息子像があって、そんな息子の母親像があるのだろう。
「……ごめん、落ちた、」
わざとだった。
わざと、高校入試の筆記試験では空白だらけの答案用紙を提出して。
そのとき俺は初めて親に反抗したのだ。
「なにやってんのよ、――――出来損ない。」
実の母親から受けたそんな言葉は、実の母親のものだとは思えなかった。
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