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もうこの人は俺のことを息子だと思っていなければ、それまでの期待も終わってしまったのだと。
たかが高校受験の第一志望であった名門私立高校に落ちただけ。
たったそれだけで、ゴミを見るような目。
「翔~、あなたはママのために立派な子に育つのよー?」
「うん!でもお兄ちゃんは?」
「紘都はもういいの。お母さんはほんっとに失望したから」
今まで費やしたお金と時間の無駄だったわ───と、次はまだ5歳の弟が母親の“夢”になるのだろう。
まずは小学校受験か、同じようにわざと落ちてもっと失望すればいい。
そう思いながらも俺は俺の代わりがちゃんと居たことにどこかホッとしていた。
翔と呼ばれた弟は、俺と半分だけしか血は繋がっていない。
それは俺が9歳のときに母親が再婚した相手との子供で、いまもその男と母親、弟、俺の4人で暮らしている。
だからだろう。
「やっぱりあの男の子供だわ」と、女は俺の実の父親と思われる男の小言をわざとらしくこぼすのだ。
「……だったら居なくなってやるよ、」
そのほうがいいんでしょ、俺もあんたらも。
家でも最低限の関わりしか受けない。
そうすればあんた達が望む本当の家族だけで過ごせるだろうから。
そして俺は、自ら“居ない子”になった───。
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