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二学期は色々なイベントが目白押しで、今日のホームルームでは、今年の文化祭何をやるかについて話し合われた。受験シーズンだから、あまり時間を拘束されたくない生徒と、最後なんだから心に残るものを!と張り切る生徒の攻防戦が繰り広げられ、最終的に3年1組は縁日をやることになった。
射的、ビンゴゲーム、ヨーヨー釣りにお菓子くじ引き、色々な出し物が決まり班決めの段階まできた時、俺は、廊下側の一番前の席に座る優樹の背中を見やる。どれを担当したいとか特になかったけど、中学最後の文化祭、折角なら優樹と同じ班になりたい。
「よし、じゃあ早いもん勝ち、挙手で決めてくぞ、まずヨーヨー釣り」
ちらほら手が上がり、7人くらいずつの班ができていく。
「晴翔はどうするの?」
「別になんでも…」
「射的にでもすっか?」
なんとなくグダグダな雰囲気の中、窓側の一番後ろの席に座る晴翔達の会話が聞こえてくる。多分射的は、晴翔の取り巻き女子と松井達のグループになるだろう。
「私お菓子くじ引きがいいな」
「先生!私と真央はお菓子くじ引きで」
だけど、谷口真央と五十嵐彩の言葉で、男子の雰囲気が一気にピリつき、俺の前の席に座っている倉林が即座に手を上げた。
「先生俺も!お菓子くじ引き」
「先生俺と優樹も!」
倉林に続いた鶴田の言葉で、俺は血の気が引く。
「よし、じゃあお菓子くじ引きはあと二人」
早いもん勝ちの言葉通り、五人の名前が黒板に書かれ、反応が遅れた谷口目当ての男達が我先にと手を挙げる。俺も慌てて挙手した時には、二人なんて人数制限とっくに超えていた。
「仕方ねえな、じゃあお前たちジャンケン」
なんだかまるで、俺まで谷口目当てに見えてしまうかもしれないけど仕方ない。
「俺も!」
そこへ突然晴翔が入ってきて、クラス全体が騒ついた。どうせなら、晴翔とも同じ班になれたらいいなと思ったけど、そんな願いも虚しく、五人のうちまずは一人が勝ち抜け、その途端、晴翔はやっぱりいいやと、ジャンケンから抜けてしまう。残る一つの座をかけて、谷口目当ての男二人と優樹目当ての俺のジャンケンが繰り広げられる。
「ジャンケンポン!」
男達の叫びが響き渡り、俺は決死の思いでパーを出した。力みすぎたのか、俺以外の男二人はグーで俺が勝ちのこる。
「よっしゃ!」
思わず叫んでガッツポーズをすると、優樹が一緒じゃん!と笑いかけてきたので、俺も笑顔で手を振り頷く。自分の席に戻り、黒板のお菓子くじ引きグループに書かれた自分の名前を満足気に眺めていたら、前の席の倉林が、振り向き言った。
「なんだよ、一ノ瀬も谷口狙いだったのかよ」
「そういうわけじゃねえよ」
優樹だよとは言えないので、適当な返事をしていたら、倉林が急に声を顰める。
「でも谷口が心配だよ」
「え?」
顎で示された方を見ると、晴翔の取り巻き女子の槙野〔マキノ〕と渡辺〔ワタナベ〕が、谷口の方を見て何やらコソコソ話していた。でも、谷口目当てではない俺には、悪いけど全然関係ない。
「おまえが守ってやれば?」
「いや、神谷ファンだけじゃねえよ、おまえもさあ、ちょっと自覚持った方がいいんじゃねえの?」
「何が?」
「わからねえか、まあそこがおまえのいいところでもあるからな」
「なんだそれ?」
倉林が何を言いたいのかよくわからなかったけど、そんな事よりも俺は、中学最後の文化祭、優樹と同じ班になれた事が嬉しくてたまらない。
(5月の修学旅行では別の班だったもんな)
俺は一人喜びを噛み締め、短髪の襟足から真っ直ぐ伸びた優樹の日に焼けた頸を、こっそりと見つめた。
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