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自分でなければ許さない
ここのところ、よく似た夢を見る。
ある時はゾンビに追いかけられ、またあるときは謎の敵(おそらくは幽霊)に追い詰められる、またあるときは日本人形に高速で追尾され。
化け物の類は追いかけっこが好きなのかもしれない。目覚めはやや覚醒し緊張感が残るものの、感想は変わらない。
「ああ、楽しかった!」
自傷行為の跡は、目立つものなら見るものに何らかの衝撃を与える。
隠さない人は、吹っ切れているのか、それとも周囲を気にしない人なのか。
私は傷口を愛しく思う。
転んで擦りむく膝に摩擦熱で焼けた皮膚。そこから覗くは薄桃色の肉の色。紅色の火傷はいいアクセントになる。
紙で手を切ると、まず短い線状の赤がアピールしてくる。少し置くと茶のカサブタに変化する。
それを観察するのが、結構面白い。
ただしペンだこは別。醜くて嫌い。
撫でて、よく見て、愛しさが増す。まるで我が子のように。
ある日、生意気な子供が現れた。
そいつは隅にいた私を目ざとく見つけ、ことあるごとに意地悪を言った。
当然無視したが、気に入らなかったのだろう、ある休み時間に読んでいた本を取り上げ床に叩きつけ踏みやがった。何たる所業だと、怒りのあまり本に目を留め硬直していたら、そいつはこちらを覗いて嘲笑った。
は?
「何笑ってやがる、クソガキ」
その阿呆は首を左右にやって自分じゃないアピールをしているのかふざけたやつだ。
「おいてめえ、どこ見てやがる」
「っは?…」
そいつの額に手を伸ばし前髪に差し込み、頭皮に指先を埋め込むようにして髪を強く引っ張る。
「いだいいだいっ! 何するんだっっぅあっ!」
周囲で見ていた奴らも動揺してざわめく。うるせぇな。耳元で騒いでうるさかったので後ろに肘を引いてから前に突き出し離す。
うわあ、と間抜けにも腹を見せて転がったやつは起き上がろうと藻掻くのでその背に片足を乗せて体重をかける。
「うっ、やめろっ! はなせよぉっ!」
「……」
いじめを傍観してた奴らは、助けようともせずに黙っている。いや、うるさすぎて何を言っているのかわからないな。意味が伝わらないなら何も聞こえないのと同じだ。
先生を呼びに行く者すらいないとは嘆かわしい。一応傍観者として協力してたんだろうがてめえらもよお。同罪だっつーのに。
「私の大事なものを汚した罪は重い。だからお前は今日から私の下僕になれ」
「いっ、なんだそれ…い、な、何なんだよお前はっ!」
「は? 私は私だが何か」
遠くから先生の足音が近づいてきた。ならもう、終いかよ。
「それが嫌なら二度とバカになるなよ」
浮きまくった。
主人公: 他人にあまり興味がない、割とナルシストな俺様タイプ。能ある鷹は爪を隠すが、こいつの場合は必要がなければ使わないだけ。
いじめっ子: 予想外の反撃でビビった。小学校低学年だから力の差はあまりない。よって簡単に横転した。下僕として度々荷物を運ぶ手伝いをさせられるし、逆らおうとするも協力者は所詮傍観者だけだった。
傍観者: めっちゃ怖くて動けなかったし逆らえない。でも普段は本読んでるだけなのでそのうち慣れる。腫れ物に触るような態度。いじめっ子はターゲットにされたくなくて従ってた。そのうち自分たちも恩恵に預かっていたと知るかもしれない。
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