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回る、回る、回る、回る。
回す、回す、回す、回す。
噂は変化し、妙な様相を呈してきた。自分達で作って流したデタラメの噂のはずなのに、本当に幽霊を見たという話が次から次へと出てくるようになったのはのは何故だろう。僕はどんどん怖くなってきた。
そしてついに、事件が起きる。
「お、オーナー……!?何やってんですか!?」
閉園後の遊園地で、オーナーが勝手にコーヒーカップを動かしたのだ。スイッチを入れて乗り込むと、一人でコーヒーカップを回し始めたのである。その様子は、どこか憑りつかれたようにも見えた。笑っていたのだ、にやにやと。確かにここのところ幽霊騒ぎで人手も増えて、売上も伸びてご機嫌だっただろうが――その時の顔はまるで。
「ふふふ、ふふふふふ」
回る、回る、回る、回る。
回す、回す、回す、回す。
「ふふふふふふ、ふふふふふうふふうふっふふふふふふふふふ」
まわす、まわす、まわす、まわす。
まわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわすまわす――。
ピンクのコーヒーカップは異様な速度で回り始めた。強制停止した方がいいのでは。ようやく僕が思い至って制御盤を操作しようとした、次の瞬間。
ぶつん、と音が。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
スタッフの一人が、絶叫した。
飛んできたからだ――オーナーの、ねじり斬られたような首が、弾きだされるように外へ。
その顔は、どこまでも最期まで嬉しそうに笑っていたという。
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