オーバーフロントライン

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1 未だ寒さの残る早春の学園都市。 昼間はともかく夜はすっかり冷えて雪でも降りそう。 明日はゼミの研究発表。 レジメの作成を終えて一息つく。 ラジオを点けて流す。 キッチンへ行ってコーヒーをいれに掛かる。 午後十時過ぎ少しうるさい気がしてボリュームを下げる。 デスクにサーバーを持ってきて金属製のカップにコーヒーを注ぐ。 レジメは、現代の宗教を比較検討する比較文化人類学が対象だった。 前回のゼミで同席の同級生に、独断的だと批判された。 判断基準に偏りが有りすぎるという。 偏見と言う貴方が偏見なのでは、と返しておいた。 太陽系外縁で足止めを喰らって未だオールトの雲の外。 既に一週間になる。 幸い食料は未だ未だ豊富だったので兵糧攻めなら耐えきれるだろう。 地球連合宇宙軍の艦は未だロイドを取り囲でいる。 イースとメイトは指令室に居なかった。 宗教を科学の視点で分析した二十世紀前後の宗教学。 対象は立場で解釈の仕方が異なる。 「卒業か……」。
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