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「実迦ちゃんがアキ兄の奥さん?」
大きな目で興味津々といった様子で見上げられて、私はドギマギしてしまう。
「今はまだ違うけど、すぐにそうなるよ」
彰久さんがホットプレートを出してクレープの生地を焼きながら、サラリとそんな事を言うものだから、私はドキッとさせられてしまう。
付き合い始めて五ヶ月。彰久さんと出会って約九ヶ月。
同棲を始めて三ヶ月目になろうかと言う頃。
彰久さんの姪っ子の一穂ちゃんが、泊まりがけで遊びにやって来た。
今までは彼女が来る時は学校の事務の人だとバレるのが怖くて逃げ続けていた私だったけれど。
さすがに今は、そんな事を言っていられない立ち位置になってしまった。
彰久さんが「一穂はいつものチョコバナナでいいよな?」と声をかけて、ふっと彼女の視線がそちらに流れてホッとして。
私は左手をギュッと握りしめる。
「うん! 実迦ちゃんは?」
「ごめんね、お姉ちゃん、今ちょっとお腹いっぱいなの」
そう軽い嘘をついて誤魔化した私を、一穂ちゃんがじっと見上げてきて、ハッとしたように手を叩いた。
今日の私はコンタクトレンズで変装しているんだけど、もしかして気付かれた?
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