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俺と大貴は家が近所で、ばあちゃん同士が仲がよかったこともあり、子供の頃からよく一緒に遊んでいた。
俺には両親がなく、ばあちゃんとふたり暮らしだった。両親が離婚して、母親はこの町に俺を連れて帰ってきた。それが赤ん坊の頃。それからしばらく3人で暮らしていたのだが、俺が3歳の時に家を出て、他の男と結婚した。俺を置き去りにして。
父親の顔は覚えていないが、俺のこの茶色がかった髪と白い肌は父親ゆずりだそうだ。父親からも、母親からも、連絡は一切ない。
そんな複雑な家庭環境だったから、周りからの視線を感じながら生きてきた。
まして田舎だったから、噂が広まるのも早い。町中みんな俺のことを知っていて、陰でこそこそ言われていた。
そんな大人の態度は子供にも伝染する。俺と仲良くしようとする奴はいなかった。
ただひとり、大貴を除いて。
大貴も両親が離婚して、ばあちゃんと母親と妹と暮らしていた。だからだろうか。大貴は普通に俺と接してくれた。
ふたりでよく学校をサボって釣りに行ったりした。この町が嫌いで、早くこの町から出たかったけど、大貴と一緒にいるのは好きだった。唯一、本当の自分を出せる場所だった。
それが高校をもうすぐ卒業するという日、大貴から突然告白された。
「ずっと好きだった」と。
俺は「ごめん」と言ってその場から逃げ出した。それ以来、口をきいていない。
大貴の運転する車の助手席に座って、俺は外の景色を見ていた。
大貴は俺とーー自分を振った相手と一緒にいて平気なんだろうか。
他に好きな奴が出来たから、俺と会うのも平気になったのだろうか。
肝心な部分に触れられないまま、車は育った町へと近づいていく。
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