Stage 2

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Stage 2

「指定難病、肺高血圧症。およそ百万分の一の確率で発症し、心臓や肺の機能に深刻な障害をもたらす進行性疾患」  文はいまいちよくわからないといった様子で小倉を見上げた。 「簡単にいうと、少しの運動で呼吸困難、疲労感、胸の痛み、失神が起きる病気だ。進行性っていうのは、これから症状がさらに悪化してしまう可能性があるってことなんだ」 「けど大丈夫だよ」小倉はつづけた。「昔こそ明確な治療方法はなかったんだけど、今はお薬がある。それに、辛い症状は運動をしないことによって発生しにくくなるんだ。大変だけど、一緒に戦おう。必ずよくなるから」  窓際に並ぶ両親は、呪文のように必ずよくなるとくりかえした。母がちょっとごめんといって病室からでると、父もすぐに戻ると残して後を追った。 「文ちゃん、残念ながら部活は厳しい。けど授業はここで受けられるよ。今は離れた場所でもリアルタイムで授業を聞けるからね。そうだ、見てほしいものがある」  ベッド横の手すりに設置された机、そこにモニターが置かれた。小倉が再生ボタンをタップすると、目の前に教室があらわれた。  まだ見慣れていない教室で、名前もうろ覚えの同級生が文の名前を呼んだ。すると、一人ひとりカメラの前にやってきて、最初の授業と同じように自己紹介をした。  あらかじめ「常に冷静に」と忠告されていた文は、冷めた顔で映像を眺めた。務めを終え暗転した画面がモノクロの彼女を映す。彼女のぴくりとも動かない頬は、目から伸びるいくばくかの光の筋に縦断されていた。  小倉がそこにティッシュをあてがうと、娘と同じく目を腫らした両親が段ボールを抱えて戻ってきた。文が一ヶ月前にもらった教材一式だ。カラフルな表紙だった。それが文には眩しすぎた。
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