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「みずほ先輩、かつき君、これからよろしくおねがいしまーす!」
盛大に幕を閉じた卒業式の後、結奈は生徒会室にあいさつに来た。
「結奈ちゃん、いらっしゃーい」
「結奈には新学期、勧誘を頑張ってもらうからな」
「うん、まかせといて!」
「しっかし、あのときは凛々しかったよ。愛のキューピッドじゃん」
「まあねぇ~」
どうやら吹っ切れたようで安堵した。
あの後、おふたりの先輩はその場で遠距離恋愛の約束をさせられ、結奈はそれを見て大泣きした。俺は結奈の慰め役となった。
もちろん、絵は三人の手によってめでたく元の姿に戻された。
「でもかつき君ってひとを見る目があるんだね。ちょっとカッコイイなって思っちゃった」
「まあな」
いや、真相を解明できたのはみずほ先輩の推理のおかげだ。宇和野先輩の洞察はすべて、みずほ先輩の入れ知恵だったと後で知って驚いた。
「恋を知る瑞穂だからこそ、ひそかな想いを理解できたのだろうな」、と宇和野先輩は語っていた。
いや待てよ? そのときは聞き流したが、だとするとみずほ先輩は誰かに恋心を……?
疑問を抱くと同時に、結奈が人懐こく腕に絡みついてきた。
「ねえねえ、失恋祝いに甘いタピオカミルクティー飲みたい~」
「よっしゃ、今回だけは俺がおごってやるぞ」
「やった、ふたりで学校帰りにタピタピィ~♪」
「ちょ、ちょっ……それはだめっ、ぜったい!」
突然、みずほ先輩が絶叫して割り込んだ。俺と結奈はふたりして驚き飛び上がる。
「「なんでタピオカがダメなんだっ⁉」」
「そうじゃない、この鈍感バカイケメン男が! こうなったら今日はとことんお説教よ!」
みずほ先輩はまたしても顔を紅潮させ、俺に向かって声を張りあげた。
そのとき、俺は嵐に呑まれる裏山の椎茸の気持ちが理解できた気がした。
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