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みずほ先輩と美術部の不思議な絵
「こんちはー。宇和野先輩、久しぶりっすね」
生徒会室の扉を開けると、卒業式を控えた前生徒会長の姿があった。現生徒会長の清川瑞穂――みずほ先輩と机を挟んで向かい合っている。机上には紙と筆記用具が広げられていた。
「おう、克樹か。生徒会、だいぶ板についたみたいだな」
「あざーっす。それと先輩、大学合格おめっとーございまーす。でも今日はなんでここに?」
「最後の仕事があってな」
宇和野先輩がみずほ先輩にちらりと視線を送る。
「わたしが卒業式の『送辞』、宇和野先輩が『答辞』の役目なのよ。だからその打ち合わせよ」
「そうっすか、最後までおつかれさまーっす」
「ははっ、相変わらずノリが軽いな、克樹は」
「すみません、かつき君はわたしがちゃんと教育しますから」
俺、黒沢克樹はみずほ先輩に誘われて生徒会に引きずり込まれた。どんなにこき使われても頑張るけなげな一年生。
「いやほんと、いっつもおしおきの嵐っすよ」
「そっ、そうか。――それはなんともうらやましい」
「は?」
「あっ、いや、コホン。――それはなんとも裏山の椎茸のごとく厳しい環境だな、と言いかけて言葉に詰まった」
「まじですか、裏山ってそんなに嵐が多いんっすか」
「ああ、温暖化の影響らしいな」
「なんで裏山だけ温暖化の影響が⁉」
「それはこの学校が局所的にアツアツだからだ」
「どこっすか、その元凶は⁉」
驚いて尋ねると、宇和野先輩はにやりと笑って視線を俺からみずほ先輩に移した。
みずほ先輩はなぜか黙ってうつむいている。
どうやら学校の裏山に潜む謎は、歴代の生徒会長のみが知る極秘事項のようだ。
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