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打ち合わせを終えたところでみずほ先輩は猫のようにうーんと体を伸ばした。
「先輩、大学生活楽しみですねー」
「生徒会も順風満帆なようで安心したよ」
「宇和野先輩が地盤を固めてくださったおかげです。ところで――」
みずほ先輩はひと息ついて真剣な表情になる。
「最近、美術室の外壁に貼られた絵の人が消えたらしいんですよ」
――絵の人が、消えた?
「ああ、現三年生の引退記念として美術部部員が全員で描いた絵のことだろ」
俺は初耳だが宇和野先輩はご存知らしい。
「はい、部員たちが並んで夜空を見上げている絵で、それぞれが自分自身の絵を担当したらしいです」
「その真ん中に立っている部長の村本が消えたってやつな」
「はい、それです。部員達から気持ち悪いって言われて」
「それで調査を頼まれたってわけか」
ふたりの会話で事情はおおむね飲み込めた。
「誰かの嫌がらせだろうか」
「いえ、わたしにはどうしても嫌がらせには思えないです」
みずほ先輩は疑問を抱いている雰囲気。何か違和感があるのだろうか。
すると俺に目を向け命令を下した。
「じゃあ、かつき君も一緒に見てくれないかしら」
「はい、同伴させていただきます!」
考える間もなく直立し敬礼する。今日も下僕反射は健在だ。
そして俺たち三人は美術室へと足を運んだ。
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