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「これが例の『人が消えた絵』かぁ」
部員全員が並んだ絵。十一人いたはずなのに、絵には確かに十人しかいない。中央にはひとりぶんの空間があり、虚空な背景に描き換えられていた。
その左隣には美人オーラを漂わせる長髪の女子、右隣には小柄なふわくしゅの髪の女子が描かれている。
「もともとはここに部長の村本先輩がいたんすね」
「この絵をみてかつき君はどう思うかな」
「俺は幽霊のしわざかと思います」
「なんで⁉」
「だって、背景がしっかり描かれていて、いたずらにしては綺麗すぎる消えかたですから」
「ああ、かつき君もそう思ったのね。幽霊かどうかは別として」
「やったとすれば相当テクニシャンな幽霊かと」
「なんで嫌がらせとかは考えないわけ? ――まぁ性善説は君のいいとこなんだけどね」
「みずほ先輩は現実主義っすね。けどうまく消すなら美術部の誰かがやったんじゃないっすかね」
「うーん……」
みずほ先輩は絵を見つめ思案する。
「ちなみに僕が思うに、左側は鮎川だろうな」
宇和野先輩によると、それは引退する三年生、鮎川晴美先輩らしい。
「そうなると右側の小柄な女の子は誰だろうな」
「わたし、川上結奈ちゃんじゃないかと思うんだけど」
「あっ、確かにそうかもしれないっす!」
川上結奈という子は美術部に所属している俺のクラスメート。ところが最近、美術部を辞めるから生徒会に入会したいと俺に伝えてきた。先日、みずほ先輩にも引き合わせたところだ。
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