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活動の場として生徒会を選んだのは、校内で絶大な人気を誇るみずほ先輩に憧れているからとのことだった。
ただ、美術部を辞める理由については詮索しなかった。
――これは結奈に聞いてみる価値があるな。
「もしかすると、美術部で揉め事があったのかも。俺、学校帰りに結奈を誘ってふたりきりで聞いてみます」
「ちょ、ちょっと待って! わたしも行く!」
みずほ先輩は突然あわてだした。
「いや、別にいいっすよ。先輩忙しいっしょ」
「ふたりきりなんて、だめ、ぜったい! ……あっ、いや、聞き込みは女子のわたしがいた方がいいでしょ」
「俺ひとりで十分っす」
「刑事だってたいてい、ふたりで尋問するじゃない」
「それドラマっすよね。この黒沢克樹、任務はまっとうしますから頼りにしてください!」
「たっ……、頼りになんかできないから言ってるのよっ! っていうか心配なのよ、いろんな意味でっ!」
「みずほ先輩、言い草が究極的にひでえ!」
「ひどくなんかないわ! この鈍感男子!」
みずほ先輩は顔を赤らめて支離滅裂だ。ときどきこんなふうになるから厄介である。
そんなみずほ先輩の様子を宇和野先輩は面白そうに見ていた。俺は救いを求める。
「宇和野先輩、みずほ先輩が俺のことをディスるんですけどっ!」
すると宇和野先輩は俺の肩に手を乗せ、さわやかに微笑んだ。
「いや、全面的にお前が悪い。このバカイケメンが!」
「なんでっ⁉」
どうしてこうも変わり者に恵まれたのだろうか。俺の疑問はいまだ解決しないままでいる。
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