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「お待たせしました! 結奈にはめっちゃ拒否られましたけど」
生徒会室の扉を開いて第一声。そこにはみずほ先輩、宇和野先輩と、それからもうひとり男子生徒の姿があった。
真面目で思慮深そうなひとで、絵の雰囲気そのものだ。村本先輩に違いない。ただ、表情はえらく曇っていた。
「みずほ先輩、絵を描き換えたひとって――」
みずほ先輩は俺を見てうなずく。
「うん。村本先輩はそのひとりよ」
「そのひとり?」
「かつき君は宇和野先輩と一緒に村本先輩から事情を聞いてほしいの。わたしは結奈ちゃんとふたりで話をするから」
みずほ先輩は神妙な顔をしていて、事の真相を見通せているような雰囲気があった。俺は黙ってうなずく。
みずほ先輩が結奈を連れて部屋から出てゆく。そこで宇和野先輩が話を切り出す。
「村本、どうして自分から言いに来たんだ」
村本先輩はうつむいたまま答える。
「……騒ぎになっていたから、これ以上迷惑はかけられないと思ったんだ」
「それで真相を打ち明けに来たのか」
「生徒会が調査しているって聞いたからな」
「けれど美術部の思い出に手を加えた目的は――鮎川に自分を忘れるよう、暗に示していた。そうだろ?」
村本先輩はぎゅっと両手を握りしめた。拳が震えている。
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