1.底辺エロ漫画家

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 語尾にハートをつけて、彼は言った。目の前にいるのは……桃プリ。僕の逆恨み相手だ。一昨日錯乱状態でツイートした文面が、こいつにRTされたことで意図せずバズり、お礼として茶に誘われた。別にこの男に会いたかったわけではないのだが(いや、嘘だけど)、断る理由もなかったのでこうしてやってきた次第である。  そんなことを思い返しつつ、僕は桃プリから目を逸らしてメニューを手に取った。が、意味不明な文字列ばかりで、そのまま静かにテーブルに戻す。 「天木……でいいです。恥ずかしいのでそんな名前で呼ばないでください」  桃プリは妙に嬉しそうな顔をして「あまき、本名ですか?」と繰り返した。 「ええまあ」 「じゃあ僕のことはモモって呼んでください」  桃プリってツイートしたことに対する嫌味か? 天木が怪訝な表情をしたのを見逃さず、彼は「いやいや、本名がモモなんですよ。数字の百って書いてモモ。男っぽくないでしょう」と自虐する。 「……僕なんかよりずっとイケメンですよ」
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