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ジトっとした目で天木は百をにらむ。しかし、百はでへへっと笑うだけだった。不信感、不安が拭えない。天木はハンモックの網をぎゅうっと握りしめた。
「見たんですか」
「はいもちろん、全部! ファンですから」
「ぎええ……」
「天木先生の新刊もよかったですけどそれ以上にエロかったですよ。いやああんなに人気の方とは……もっと早くに知りたかったです。悔しいっ」
嘘いえこの野郎。この軽薄な男がいう言葉すべてを信じられなかった。
「……でなんの用なんですか今日は」
「お茶です」
「……は?」
「一度お会いしてみたくって。先生のおかげでダウンロード数が跳ね上がったんですよ」
「それはどうも」
タイミングよく来たカフェ店員に、百はカフェボウルとプリンをふたつずつ注文する。再び二人きりになったところで、ずいと百は前のめりになった。その勢いに押されて思わず天木は後ずさる。ハンモックがぐらぐらと揺れた。天木の頭の中は疑問符だらけだ。なぜわざわざ底辺漫画家を茶に誘ったのか。彼の言う「ファン」の言葉もどうせお世辞なんだろ? と。
なぜ、なぜ……何故こんなにも馴れ馴れしいのか?
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