1.底辺エロ漫画家

12/26
前へ
/119ページ
次へ
そして何より一番わからないのは百の態度。 「天木先生、僕に付き合ってください」  どうして僕は、天下のキラキラエロ漫画家(もうなんかおかしいが)の男に告白されているんだろう。右手を差し出して百は頭を下げている。天木は目を白黒させながら「お断りします……」と腕を伸ばしてしっしと追い払った。が、すぐに手首を強く握られる。 「ちょっと待って、僕真剣なんです。お願いだから考えてくださいよ」 「いや無理ですって」 「そう言わずに」 「本当に勘弁してください」 「ねえ天木先生~」 「おい」  ドスの効いた声が頭上から降ってきた。 「あ、串田さん」  誰。串田と呼ばれた男は百に厳しい視線を飛ばしていた。狼狽える天木をよそに、串田は百を叱責する。そのたびにビール腹がぽよんぽよんと揺れた。 「どうしても企画に参加させたいやつがいて口説いてくる……っていったのはどの口や」 「……俺で~す」  企画ってなに? そんな話はまったく聞いていない。ほらやっぱりお茶なんて嘘じゃないか、と天木は落胆した。売れっ子作家に呼び出されてのこのこ現れた自分がバカだった。 「顔出しってできる?」 「……え?」
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

128人が本棚に入れています
本棚に追加