1.底辺エロ漫画家

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 何のだよ、というけんか腰の質問をぐっと飲み込んで、天木は串田に営業スマイルを向ける。「初めまして串田さま。私、企画に関して何の説明もそこにいる桃太郎プリンス先生から聞いておらず……困っております」ペンネームを強調して尋ねると、串田はあきれ顔で「申し訳ない」と謝罪した。 「先生、あんたの口からちゃんと言え」 「えーっ、でもこんなかわいい先生を不特定多数が目撃しうる電波に出すのはやっぱり……うーん」 「もう先方に話は通しちゃったんだよ。どっちにしろ来週には顔見せにいかなくちゃいけない」  へっ? と置いてけぼりで進む話を前に天木は目をぱちくりさせる。ハンモックにへなへなと座り込む自分を、妙に熱っぽい視線でみる百がいた。気味の悪い目つきに思わずびくっとする。こわっ、なに……。何が進んでいるの? 天木が戸惑っていると、彼はグレーの虹彩をひょいっと逸らした。  
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