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桃プリの顔を思い出す。まるい額に浮かぶ汗の玉。かたちのよい唇が歪み「鳴いてみろ」とかいうのだろうか。無意識に指先の力が入る。敏感な粘膜を擦ってしまい、
「あ……っ!」
腹の上にどぴゅっと粘液が飛び散った。ぬめった感触に天木は体を震わせる。震える息を整えて、ティッシュで汚れをぬぐい取った。
心地よい倦怠感につつまれて、ちいさく溜息をつく。そうして天木は日付が変わったころに眠りについた……。
翌週、天木はコミックHEAVENの会議室の机の前に座り込んでいた。「意外と真面目に集合したから急いで準備しろ」という串田の指示のもと、同年代くらいのスタッフが忙しく立ち働く。
漫画家全員が時間にルーズだと思わないでほしい。意外とデリカシーのない串田に内心で「死ね」と悪態をついていたら、隣の男がすすっと身を寄せた。
「あんまきんぬ先生、来てくださったんですね」
長机に三名雁首揃えて座っているなかの、センター桃プリが僕にさわやかに笑いかける。「あ、ははあ……。そりゃ、あなたが誘ってきたからや」と天木はぎこちなく口端を持ち上げた。
「へえ〜、意外です」
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