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自分をじっと見つめる別の視線に気づき、天木は低い声で桃プリに声をかけた。彼は妙に嬉しそうな顔をして手をこすり合わせる。
「ねえ。なんで動画消しちゃったんですか?」
「……!? せや、消した」
わかりやすくうろたえながら天木はトンチンカンな返事をする。桃プリは「そね、チャンネルごと全部消えてた」と猫のように目を吊り上げた。オシャレな丸眼鏡の奥にある瞳孔がぎゅーっと開いていく。
「……テレビ出るっちゅーのに、あーいうのはアカンやろ」
「テレビじゃなくて、ミコミコ生放送ね」
ミコ生でもテレビでも似たようなもんやろ。早かれ遅かれネットに晒した喘ぎ声っちゅうのは抹殺される定めだったのだ――。企画のせい、つまりこの話を持ち込んだ桃プリのせいや。僕はなんも悪くない。唇を尖らせ不満丸出しの顔をしていると、天木はふっと空気を緩めた。
「そうかもですね。……先生って頭いい」
おう。褒められ慣れていない天木は、きょとんとした顔を桃プリに向けた。
「無防備な顔して……」
「はあ?」
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