1.底辺エロ漫画家

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 天木は呪いの念を込めながらスクロールする。新しく買ったグリーン、膝の上で甘える飼い猫、新しい機器を導入しました、残業終わりのストロング系チューハイ。兼業作家だと知って、ますます嫉妬した。やたらオシャレな投稿に混じって彩度の高いイラスト……見覚えのある絵が目に入った。これは自分の星1レビュー作品じゃないか? 天木はおもわず投稿をクリックした。 〈あんまきぬん先生の新作。最高でした。分冊版だけどはやく一冊にならないかなあ。みんな読んで~先生の食へのこだわり尊敬です〉  ホンマか?   天木は目を眇めて、何度も文字列を見返した。嘘に決まってる。見ず知らずの他人のお世辞なんか信じるだけバカだと思う。けれど見なかったことにするには惜しく、天木はこっそりブックマークをした。  ツイッターを開いてあんまきぬんとしてつぶやく。ゲーミングチェアの上に体育座りをして、背中を丸めてタイプした。息をつめてどろりとした感情を〈なんもいいことない〉の一言で表した。創作に悪影響だとわかっていても暗い気持ちになってしまう。 「…………あかんなあ」
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