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「一年坊コラ! テメー陸奥先輩の分は焼きそばパンじゃなくて焼きうどんパンだって言ったろうが!?」
「う、売り切れてまして……」
「陸奥先輩が『生徒会』の幹部なのくらい一年坊でも知ってんだろ!? 痛てー目にあうくらいじゃ済まされねーぞ!?」
「俺達まで巻き添え食っちまうんだぞオイ!!」
「す、すみませんすみませんっ」
灰田愛第七高等学校。
通称「ハキダメ」と呼ばれる、もはや学校として機能しているかも怪しい高校の、もはや満足に営業しているかも怪しい購買部のパンを買いそびれ、少年はいかにも不良といった出で立ちの上級生に平謝りしていた。
これが少年の日常。
しかし求めていた「平凡」。
こうなることも想定した上で少年は、男子率九十九・九パーセントの灰田愛を進学先に選んだのだ。
選んだ、はずだった。
「甘めーんだよ……この『ハキダメ』でトチっといて『すみません』一つで、」
上級生の拳が少年に向け振り上げられ、
「許されるワケねーだろッ!!」
「ッ――」
「私達の領内で」
真っ直ぐに放たれたそれを――一人の少女が受け止めた。
『!!?』
「よくもまあ幅を利かそうと思えたものですね。生徒会派の先輩方」
少年とそう変わらない背丈の、ショートボブの黒髪の女の子。
二回りほども大きい男子の拳の勢いを片手であっさり殺し、少女は丸眼鏡の奥から強い光をたたえる目で、しっかりと不良達を見た。
「ゲッ……」
「風紀委員長の――紀澄風ッ!!」
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