10人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
***
デートの終了と同時に、空模様が怪しくなってきた。折り畳み傘を忘れたことに気づき、慌てて家へと走る私である。
龍城がいなくなると、私の世界は一気に色が褪せたようになってしまう。いつもにこにこ笑っていて、ひっきりなしに面白い話を聞かせてくれる彼。それでいて、私が悩んでいる時は真剣に耳を傾けてくれるし、アドバイスが欲しい時はそうしてくれる。彼がいない場所は、いつだって音も色も足らないのだ。さながら、春の花畑の小道から、一気に冬の坂道に入ってしまったかのように。
――ああ、嫌だな、月曜日。
日曜日終わりの、此の何とも言えない空気感。日曜日にサザエさんを見ると気持ちが沈む、というのが社会人としては嫌というほど分かるというものである。月曜日が来る。また朝早く起きて、夜まで仕事をしなければいけない。最近、仕事量が多くて忙しいし、残業が続いている。ソファーにダイブしてテレビをつければ、タイミングよく天気予報がやっていた。
『明日は、朝から関東は雨模様となるでしょう。洗濯物は家で干してくださいね。雨は夜まで降り続く見込みで……』
朝から雨とは、さらに憂鬱な。今度こそ折り畳み傘をバッグにつっこまなくちゃ、と思いながらも私はしばらくその場を動けなかった。
妙に体がだるい。ケーキを二個食べてしまって胃もたれをしているわけではないだろうに。
――雨かあ。……やだな。朝から濡れるのか。
週刊予報を見ると、火曜日まで雨マークがついている。明日の予報はまだ変わる可能性があるとはいえ、じっとりとしたため息が漏れてしまう。
火曜日は、私の誕生日だった。誕生日に一日雨が降るというのか――せっかく、龍城がお祝いしてくれると言っていたのに。
『龍城、明日雨だよー。すっごく嫌。朝から濡れなくちゃいけないなんてー』
なんとなく、ぼやきのLINEを龍城に送った。
返信を確認することもなく、そのままスマホをスリープにして目を閉じる。
晩御飯に買ったコンビニ弁当はキッチンに置いたまま。脱いだコートは散らかしたまま。それを叱ってくれる人もここにはいない。
落ち込みそうになる気持ちを振り切るように、私は無理やり意識を闇へと沈めたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!