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***
翌日。
『今日も仕事だ、嫌すぎるー!営業部の方はどう?今日も直帰なの?お疲れ様、私もがんばるー』
仕事中にこっそりと龍城にLINE。スマホをしまって、私はパソコンに集中した。今日中に、出来る限りの商品の出荷手配を済ませてしまおうと決める。三十八件、倉庫で探してきてピッキングして梱包して発送。一件ごとに時間がかかるのがこの仕事だった。定時、他の社員たちがちらほら帰っていくのに挨拶をしながら、私はひたすらパソコンと社内倉庫を行き来している。
――あー……この部品、残り少なくなってる。取り寄せないと、ちょっとまずいかも。
メモを取りつつ、入力を続けようとした時。ぽん、と誰かに肩を叩かれた。
「澤井さん、お疲れ様。また残業?」
「あ、課長、お疲れ様です」
「うん……」
社員たちからも慕われている、渋沢課長。若い頃は間違いなくイケメンだったのだろうな、と思わせるような渋いダンディな男性である。彼はパソコン画面と私を交互に見て、あのさ、と続けた。
「最近、少し頑張りすぎじゃないかな。その仕事、明日に回しても大丈夫だよ?というか、今日入った注文を今日一日で全部終わらせる必要はないんだし。月曜日だしね。他の人と一緒に君も帰っていいんだよ」
「ありがとうございます。でも、できればすっきり片づけて帰りたいんです」
「それで、連日遅くまで残業しすぎるのはさすがにまずいと思うんだけど」
確かに、ここのところ私一人で残業していることが続いている。他の社員たちにも、そこまで頑張らなくてもいいのに、と声をかけられることは少なくなかった。
わかっている、本当は。今日やらなくてもいい仕事を、無理に今日に詰め込んで残業になっているということは。残業を、自分がしたがっているということは。
何故なら、それは。
「……明日」
渋沢課長は、ぽつりと呟いた。
「澤井さんの、誕生日なんだっけね。おめでとう」
「あれ、知ってくれていたんですか。ありがとうございます」
「まあね。五十嵐君から聴いていたから」
五十嵐、というのは龍城の苗字だ。そういえば、龍城と渋沢課長は結構仲良くしていたっけな、と思い出す。まるで父と子のような関係だ、なんて思ったこともあった。何度も飲みに誘われるんだよーと話してもらったのを思い出す。なんでも、渋沢課長が営業課から営業補佐課に移るまで世話になっていたのだとかなんとか。
「これ」
そして、課長は。
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