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『李緒へ。
お誕生日おめでとう、李緒!二十八歳の誕生日だね。お互いそろそろアラサーかー、年食ったもんだ。
大学で出会ってからもう八年も過ぎたんだね。長いね。そろそ俺も給料たまってきたし、二人の同居生活も二年になったし、いいかなあって思ってるんだけど、どうだろ。
結婚しないかな、駄目かな
誕生日プレゼントは、りっちゃんが好きそうなペンダントを選んでみたよ。実はおそろいなんだ。それとは別に、二人で指輪も買いに行きたいって思ってる。
俺全力でりっちゃんを幸せにするし、いっぱい美味しいご飯を食べさせてあげたいんだ。それが、俺の幸せだからさ。
いやごめん、誕生日の手紙で。今度ちゃんと口でも言うから許して。こればっかりはほんと、俺でも覚悟がないとはっきり言えないというかなんというか。
大好きだよ、りっちゃん。
これからも笑顔でいてね。りっちゃんの笑顔がそこにあるだけで、俺はどこにいても幸せです!
龍城』
「……馬鹿ぁ」
誰もいないロッカールーム。プレゼントは可愛らしいクローバーのペンダント。一緒に添えられていた手紙を読んだ私は、その場に崩れ落ちた。
多分、手紙はまだ完成してなかったのだろう。あちこち下書きして、書き直した形跡がある。慌てていたのか、誤字まで残っているのがなんとも彼らしい。几帳面に、当日まで文章を考えるつもりだったのだろう。
「そういうの、ほんと……自分の口で言いなさいよ。なんで死んでんの、馬鹿、馬鹿、ほんと馬鹿……!」
私の笑顔があるだけで幸せ、なんて。なんとも勝手なことを言ってくれる男だと思う。彼がいない世界で笑っていろなんて、なんとも残酷がすぎるではないか。
でも。
私が笑うだけで、本当に龍城が幸せになれるなら。天国でも、そうあってくれるというのなら。それを、信じさせてくれるなら。
――もう、幻に逃げないよ。……ちょっとずつ、ちょっとずつだけど……前を向くから。
そう。
今日から、私は。
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