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そう背後から肩を叩かれ、透は「あ、はい…」と振り返る。彼らを視界に入れた時、透の喉は絞ったようにひゅっと鳴った。
そこには警察官二人が"フラフラと歩く不審な男を見つけてやった"と言わんばかりに立っている。
「お兄さんこれからどこ行くの?」と馴れ馴れしく聞かれ、透は「買い物して帰るとこです…」と乾いた口でどうにか話した。
職質のターゲットとしては透のような人間は格好の餌だ。何もやましいことがなければツイてない日だ、で済むことだが、今の透はやましい事しかない。
(ど、どうしよう)
その動揺は簡単に彼らにも伝わる。「身分証見せてくれる?」と言わせてしまえばこちらの負けだ。
「えっと、今証明出来るものが無くて…」
透の財布はズボンの右ポケットだ。そこに入れた免許証を見ればきっとすぐに開放されるだろう。だが、もし警察関係者達に透や守屋の情報が出回っていたらと考えるとそれは出来ない。
「それに、急いでるんですが…」
二人の警察官は「見せてくれたらすぐだからさあ。」と透を急かす。
「それともなに?なにかやましい事でもあるの?最近多いんだよねえ、君みたいな怪しい人」と威圧感を醸し出して、萎縮させるつもりなのだろう。彼らの見下した目に透はギュッとビニール袋を握った。
「あ、怪しいですか…」
震える声には怒りも混ざっている。彼らは透を小馬鹿にしたように鼻で笑った。
その目は辺りを瞬時に観察する。それはいかにして彼らから逃げるか頭の中でシュミレーションするためだ。
前方は行く手を阻むように警察官が壁になっている。という事は逃げるならホテルからは全く逆方向になるだろう。…最悪タクシーでも拾って元のホテルの場所まで帰ればいい。

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